東京都八王子 千人町
八王子千人同心
千人の同心たちは日光東照宮を守るために戦った
(話し手)声優 魚建さん
話し手は、ベテラン声優魚建さんです。 重厚感があるその声、雰囲気は、まさに魚建ワールド。 一度聴いたら忘れられない魅力の話しで、聴くものを一気に物語の中へいざないます。
東京都八王子市に千人町という地名があります。ここは、江戸時代に徳川家からこの地域の同心(今でいう警察官)を任された人たちに因んでいます。この同心の人数は千人いたということで、この八王子の同心たちのことを八王子千人同心と言います。この千人同心たちが住んでいた地域なので、千人町という地名になったのです。
この同心たちは、身分は御家人といって、武士の中では身分の低い人たちでした。徳川家からもらう扶持(今でいう給料)だけでは足らないので、同心たちは自らも畑を耕すなどして、暮らしを営んでいました。
しかし、八王子千人同心たちは、自分たちは徳川将軍様の直接の家臣であるという誇りをもち、役目である同心の仕事の他に、学問や剣術の稽古を続けていました。彼ら八王子千人同心の中から、江戸時代の終わりのころに徳川家のために命を懸けた新選組の主要なメンバーが誕生しています。
彼ら八王子千人同心の役割は、甲斐(現在の山梨県)と武蔵(現在の東京都と埼玉県)の国境にあたる八王子の守備と治安維持でした。
やがて、甲斐が徳川家の領地になったことから、国境警備の必要性が薄れました。しかし、徳川家は八王子千人同心たちの忠義や勇猛さを知っていたため、重要な役を任せます。それは、日光東照宮の警備でした。
日光東照宮は、下野(現在の栃木県)の日光にある神社です。この日光東照宮は、徳川政権の創始者である徳川家康を祀る神社です。自分を日光に祀るように徳川家康は言い残していました。徳川家康は、自分が江戸からみて北東いわゆる鬼門の位置にあたる日光に自分を祀ることで、江戸の町を守り、。平和な世の中が続くようにしようと考えたのです。
そのため、日光東照宮を徳川政権は立派な神社として建立しました。また、普段も警備を厳重にして、破壊されないように守ろうとしました。徳川政権は、その役目を八王子千人同心ならば任せられると考えたのです。
徳川政権の創設者である徳川家康の祀られる神社を守るという役目は、徳川家に仕える忠義の心の厚い八王子千人同心たちにとっては、最高の名誉でした。八王子千人同心たちは、誇りをもってその役を果たしていきます。
しかし、時代は動きます。徳川政権が新しい天皇を中心として政権を打ち立てようとする反徳川軍に負けました。日光には徳川政権の負けを認めない武士たちが集まって、反徳川軍と戦おうと考えていました。もし戦争になったら、日光東照宮は無事では済みません。
この時、日光東照宮を守っていた八王子千人同心たちの下した決断とは。
世界遺産になった日光東照宮を命を懸けた守った武士たちの物語です。