青梅市千ヶ瀬町 雪女の碑
雪女伝説
雪女に出会ったことは誰にも話してはならない。さもないと…
(話し手)落語家 三遊亭遊かりさん
話し手は、女性噺家、三遊亭遊かりさんです。艶のある声は生まれ持った賜物。噺家になる前に経験した10年の様々な人生経験が肥しとなって、遊かりさんのお話しは、心の奥底に響きます。生まれ持ってのまさに話し家、噺家、三遊亭遊かりさんです。
日本各地には昔から妖怪の伝説が語り伝えられてきました。
妖怪とは、化け物のことです。人間ではない化け物が、人間を襲ったり、人間と協力したり、人間と戦ったりと様々な種類の話が、昔から語り伝えられています。
今回紹介する雪女もそうした妖怪が出てくる昔話の1つです。
雪と言えば、新潟県や長野県、あるいは東北地方を連想する方が多いかも知れません。
しかし、このお話は東京都青梅市に伝わっているお話なのです。
今の東京では、雪が降ることはほとんどありません。しかし、昔の東京は今よりもとても多く雪が降りました。特に青梅のあたりになると、冬は非常に多くの雪が降ったそうです。
しかし、雪が降ると言っても人間は毎日の生活を止めるわけにはいきません。樵は山に行って木を切らなければなりませんでした。
巳之吉という若い樵と茂作という老人の樵は、一緒になって山で仕事をしていました。仕事を終えるころになると、雪が強く降ってきます。山で強く雪が降ってきたら、視界が悪くなります。しかも、仕事を終えるころには夕方から夜になってきます。下手に動きまわると、遭難する恐れがあります。そこで、巳之吉と茂作は、山の中にある小屋に避難して、一晩を過ごすことを決めました。
夜になって、何かの気配を感じた巳之吉は目を覚まします。すると、小屋の中に一人の女がいました。女は、非常に美しい女でした。肌はとても白く、降りたての白い雪のようでした。
その女は、茂作の顔に息を吹きかけていました。女の吐く息もまた白かったのです。
巳之吉は恐ろしさのあまり動けないでいました。茂作に息を吹きかけていた女は、しばらくすると、巳之吉のそばにやってきました。巳之吉は恐ろしさで震えていると、女は
「今晩のことを誰にも話さないと約束するなら、あなたの命を助けましょう」と言ってきました。
巳之吉は頷くと、女は何もせずに立ち上がり、吹雪の中に姿を消していきました。
女の気配がなくなったのを確認した巳之吉は、茂作のそばにいくと、茂作は既に凍死していました。
巳之吉は、あの女が妖怪の雪女だったと悟りました。そして、このことを話したら、自分も殺されると思い、巳之吉は雪女のことを誰にも話さずにいました。
巳之吉は村に帰ってからも変わらずに樵として生活していました。ただ、変わったことといえば、あの晩から数年の後に結婚して妻ができ、妻と子どもたちが生まれたことでした。でも、巳之吉は家族にもあの夜のことは話さなかったのでした。しかし、ある日ふとした油断からぽろっと妻にあの晩のことを話してしまったのです。
雪女との約束を破った巳之吉の身に起こった出来事とは?